弁護士事務所とは何か(弁護士向け)

弁護士とは何か,を前提としたうえで,弁護士事務所はどうあるべきかを説明します。

結論から言うと,弁護士事務所は,弁護士とは何かで述べた,
①依頼者の心情的な納得と,
②法的にきちんとした解決であること,
という「社会的な価値」を,事務所全体で「効率よく」提供するための存在です。

そんなこと当たり前じゃん,と考える方も多いと思いますが,
ほとんどの事務所がこれをできていないと感じています。

その理由として,まず,弁護士は高い独立性を有するあまり,弁護士事務所がただの弁護士の集まりになっている場合があります。
イメージとしては,全く別々に料理を作るシェフが,同じレストランの厨房に立っている感じです。
なんの相乗効果もなく,家賃を折半するくらいしかメリットがないこととなってしまいます。

次に,弁護士事務所の面接の際に「勉強になるから」といったことを言ったことがある人は多いのではないでしょうか。

弁護士事務所は,「弁護士が勉強をする場所」ではありません。
なぜならば,依頼者からみたときに,その案件が,弁護士の勉強になるかどうかは全く関係のない事情だからです。

勉強が不要だといっているわけではありません。
勉強は絶対に必要です。
しかしながら,依頼者ではなく,弁護士自身に意識がフォーカスされてしまっては本質を見失ってしまいます。

弁護士の人数が増えている今,競争が激化し,弁護士事務所は厳しく評価,比較されます。
その時代はもう来ています。
自分が食べられなくなってから後悔して,弁護士事務所のあり方を考えても遅いのです。

更に,「価値」は「等しく」提供されなければなりません。

同じレストランでもシェフによって味にかなりのばらつきがあり,日によって美味しかったりまずかったりするレストランに行きたいと思わないでしょう。

このレストランにいけば,一定程度の水準のサービスを受けられるという信頼がベースにあるからレストランに行くのだと思います。

当然,レストラン側もこの要望を把握しているので,「価値」を等しく提供する努力をしています。
料理を作る人,ソムリエ,オーダーをとったり,サービングをする人,会計をする人,様々な役割の人が「協力」しています。
料理を作る人だって,料理長から,サポート役,デザートのような特定の料理を作る担当の人まで様々です。
これを,全部一人でやることは非効率です。

その点で,弁護士業界は極めて特殊な業界と言わざるを得ません。
一人の弁護士が初回相談から訴訟までを請け負う,いわゆる「縦割り」の制度になっていることがほとんどです。
これでは集団としての強みを生かすことができません。

また,最低なのは,「修行」だからと若手弁護士に事件を丸投げすることです。
もはや自分たちのことしか考えていないと言わざるを得ず,弊所の基準でいえばこのような事務所は「プロ」ではありません。
(現実にはこのような弁護士事務所は存在しないと信じたいですが,研修所のビデオに出てきたので,念のため。)

このような事務所では,依頼者から見ると,良い弁護士に当たるかどうかはくじを引くようなものになってしまいます。
また,弁護士から見ても,得意不得意があり,そもそも司法試験では書面作成しか勉強しないのに,実務に出たとたん,訴状の作成から接客まで任せられるのはシステム自体成り立っていないと言わざるを得ません。

その点,弊所は一人の弁護士が一人の依頼者を受け持つ縦割り型の事務所ではなく,職員全員で依頼者全員を受け持ついわば「横割り」の事務所です。
もちろん,一定の「価値」を提供することが目的なので,一定のクオリティに達することができれば,「縦割り」的な事件の受け持ちをすることもありますが,常にサポートしあうことは変わりません。
個々の弁護士が得意なことをやればいいし,苦手なことがあれば補う,というのが本来の弁護士事務所の形だと考えています。

これは,「複数のジャンルの業務を取り扱うか」という問題にも関連します。
一つの業務を行った方が専門性が高まり,良質なサービスが提供できることは疑いようがありません。
あるジャンルに十分に精通しないまま他の業務を取り扱うことは「弁護士のエゴ」でしかありません。

もちろん,弁護士のエゴが駄目というわけではありませんが,ほかに優先すべきものがないかをしっかりかんがえなければいけません。

そして,「協力」の基盤となるのは,人間関係です。
「お友達」になる必要はありませんが,目的意識を共通にした人が集まることが必要だと考えています。

最後に,弁護士がお金を稼ぐことについて私見を述べます。

(自分で事務所を経営するか,アソシエイトかでも変わってくると思いますが)

結論からいうと,お金は稼げていなければなりません。
なぜならば,社会に価値を提供するから報酬をもらえるのであり,
社会に十分な価値を提供していれば,勝手に報酬は増えていきます。
また,十分な価値を提供しているのだから,依頼者からの評判も高いものとなっていきます。

逆に,お金を稼げていないということは,もっと社会に価値を提供できる伸びしろがあるということです。

一方で,弁護士はなんとなく依頼者を誤魔化すことによって,売上を上げることもできます。
先にあげた,若手弁護士に丸投げをするような事務所がそのような事務所の典型例でしょう。
しかしながら,このような事務所はこれからの時代淘汰されていくはずです。

ちなみに,稼ぐことと,使うことを混同してはいけません。
十分に稼ぐことと,間違った使い方をすることは全く別の話です。

貧すれば鈍する,というように,公益的な仕事をするにしても,まずは自分の基礎体力がしっかりしていなければなりません。
自分を守れないのに,家族や,他人を守れることにはなりません。

弊所は,他事務所に比べて弁護士報酬は低額ですが,十分な売上があります。
同時に,依頼者からの評価も高いです。

お金を儲けようなどということを考えたことはありませんが,上述のように,十分な仕事をした結果,売上も高いものとなっています。

弁護士はお金儲けてはいけない,というのは,弁護士が社会の中に存在し,社会に価値を提供する存在であることを無視した間違った考え方であるといえるでしょう。
弁護士は,たくさんの価値を社会に提供し,たくさんの人を救い,たくさんの報酬を得てほしいと思っています。

 

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