1 後遺障害の等級で損害額は大きく変わる
後遺障害とは,ある程度治療をしても,身体に障害が残ってしまうことをいいます。
後遺障害の申請をしたいと思った場合,まずは自賠責損害調査事務所から等級の認定を受けることになります。
後遺障害対する慰謝料は,この等級を基準にして決まります。
例えば,手足の先に痛みやしびれが残ってしまい,「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)として,後遺障害12級の認定を受けたのであれば290万円,「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)として,後遺障害14級の認定を受けたのであれば,110万円が基準となり,この額に具体的な事案を考慮し,額を調整して,最終的な額が決まります。
一方,後遺障害の認定を受けられなければ0円になってしまいます。
このように,後遺障害の等級によって損害額も大きく変わってきます。
適正な補償を受けるためには,適切な後遺障害の等級認定を受ける必要があるのです。
2 後遺障害の具体例
どういったものが後遺障害になっていくのかといえば,下の表のようになってきます。
最も多いものが,14級にある「局部に神経症状を残すもの」になります。
明確な定義があるわけではありませんが,具体的には,手足に痛みやしびれが相当程度残った場合などがこれにあたります。
14級に認定されると,裁判・弁護士基準で110万円の後遺障害慰謝料がもらえます。
他には,醜状痕という,傷跡が残ってしまった場合があります。
位置(顔か,手足などの露出部か)や大きさに応じて,「外貌に著しい醜状を残すもの」であれば7級,「外貌に相当程度の醜状を残すもの」であれば9級,「外貌に醜状を残すもの」であれば14級となり,それぞれ自賠責基準で409万円,245万円,32万円,裁判・弁護士基準で1000万円,690万円,110万円,となります。
介護を要する後遺障害の場合の等級及び限度額
等級 | 介護を要する後遺障害 | 自賠責基準 | 裁判・弁護士基準 |
第一級 | 1.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 2.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
1,600万円 | 2,800万円 |
第二級 | 1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
1,163万円 | 2,370万円 |
後遺障害の等級及び限度額
等級 | 後遺障害 | 自賠責基準 | 裁判基準・弁護士基準 |
第一級 | 1. 両眼が失明したもの 2. 咀嚼及び言語の機能を廃したもの 3. 両上肢をひじ関節以上で失ったもの 4. 両上肢の用を全廃したもの 5. 両下肢をひざ関節以上で失ったもの 6. 両下肢の用を全廃したもの |
1,100万円 | 2,800万円 |
第二級 | 1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になったもの 2. 両眼の視力が〇・〇二以下になったもの 3. 両上肢を手関節以上で失ったもの 4. 両下肢を足関節以上で失ったもの |
958万円 | 2,370万円 |
第三級 | 1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になったもの 2. 咀嚼又は言語の機能を廃したもの 3. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 4. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 5. 両手の手指の全部を失つたもの |
829万円 | 1,990万円 |
第四級 | 1. 両眼の視力が〇・〇六以下になったもの 2. 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 3. 両耳の聴力を全く失ったもの 4. 一上肢をひじ関節以上で失ったもの 5. 一下肢をひざ関節以上で失ったもの 6. 両手の手指の全部の用を廃したもの 7. 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
712万円 | 1,670万円 |
第五級 | 1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になったもの 2. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 3. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 4. 一上肢を手関節以上で失ったもの 5. 一下肢を足関節以上で失ったもの 6. 一上肢の用を全廃したもの 7. 一下肢の用を全廃したもの 8. 両足の足指の全部を失ったもの |
599万円 | 1,400万円 |
第六級 | 1. 両眼の視力が〇・一以下になったもの 2. 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 3. 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 4. 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 5. 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 6. 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 7. 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 8. 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失ったもの |
498万円 | 1,180万円 |
第七級 | 1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になったもの 2. 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することがきない程度になったもの 3. 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 4. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 5. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 6. 一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失ったもの 7. 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの 8. 一足をリスフラン関節以上で失ったもの 9. 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 10. 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 11. 両足の足指の全部の用を廃したもの 12. 外貌に著しい醜状を残すもの 13. 両側の睾丸を失つたもの |
409万円 | 1,000万円 |
第八級 | 1. 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になったもの 2. 脊柱に運動障害を残すもの 3. 一手のおや指を含み二の手指を失ったもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの 4. 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの 5. 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの 6. 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 7. 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 8. 一上肢に偽関節を残すもの 9. 一下肢に偽関節を残すもの 10. 一足の足指の全部を失ったもの |
324万円 | 830万円 |
第九級 | 1. 両眼の視力が〇・六以下になったもの 2. 一眼の視力が〇・〇六以下になったもの 3. 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 4. 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 5. 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの 6. 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの 7. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 8. 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 9. 一耳の聴力を全く失ったもの 10. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 11. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 12. 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの 13. 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの 14. 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの 15. 一足の足指の全部の用を廃したもの 16. 外貌に相当程度の醜状を残すもの 17. 生殖器に著しい障害を残すもの |
245万円 | 690万円 |
第十級 | 1. 一眼の視力が〇・一以下になったもの 2. 正面を見た場合に複視の症状を残すもの 3. 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 4. 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 6. 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 7. 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの 8. 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの 9. 一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの 10. 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの 11. 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
187万円 | 550万円 |
第十一級 | 1. 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2. 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3. 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 4. 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 6. 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 7. 脊柱に変形を残すもの 8. 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの 9. 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの 10. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
135万円 | 420万円 |
第十二級 | 1. 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2. 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3. 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 4. 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの 5. 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 6. 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 7. 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 8. 長管骨に変形を残すもの 9. 一手のこ指を失つたもの 10. 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの 11. 一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの 12. 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの 13. 局部に頑固な神経症状を残すもの 14. 外貌に醜状を残すもの |
93万円 | 290万円 |
第十三級 | 1. 一眼の視力が〇・六以下になったもの 2. 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの 3. 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 4. 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 5. 五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 6. 一手のこ指の用を廃したもの 7. 一手のおや指の指骨の一部を失ったもの 8. 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの 9. 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失ったもの 10. 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの 11. 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの |
57万円 | 180万円 |
第十四級 | 1. 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 2. 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 3. 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 4. 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 5. 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 6. 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの 7. 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの 8. 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの 9. 局部に神経症状を残すもの |
32万円 | 110万円 |