1 評価損(格落ち)は保険会社が最も支払いを渋る項目の一つ
評価損は保険会社が交渉の中で支払いを認めることが最も少ない損害の一つです。
しかし,裁判例上,実際に評価損が生じている場合,請求が認められることは争いがありません。
そもそも評価損とはなにかというと,いくつかの考え方があります。
一般的には,修理後に外観・機能上の不具合が残ったり,不具合が発生しやすくなることで評価が下がることや,事故に遭った車という事実そのものによって市場価値,取引価値が低下する(いわゆる,「事故歴あり」となってしまう)ことと言われます。
裁判例では,「取引価格の下落」「交換価値の下落」といったワードが使われることが多く,「外観・機能上の不都合が残存すると認めるには足りないとしても、事故歴によって一定の取引価格下落が生じる」(大阪地裁平成28年3月17日)として,正面から市場価値の下落を問題とすることを認めたものもあります。
従って,「事故歴あり」となることによって市場価値が影響を受けやすい高級車や外車,新車であって走行距離が少ない車であれば,評価損ありと認められやすい傾向にあります。
※ 気を付けなければならないのは,事故を起こしたからといって常に評価損が生じるわけではありません。事故に遭っても,そもそも評価損が生じていない場合は,評価損を請求することはできません。裁判例でも評価損が生じていないとしたものは多くあります。
2 評価損が生じていることはどのように証明するのか
評価損が認められるためには,評価損が発生していることを証明しなければなりません。
しかし,事故によって評価損が生じたことをどうやって証明するかは難しい問題です。
一つの方法は,日本自動車査定協会(JAAI)を利用するものです。
事故によって生じた減価額を「事故減価証明書」として発行してくれます。
しかし,査定が有料であり,評価損が認められない場合には査定料が無駄になってしまいます。
もう一つの方法は,同型,同走行距離の「修理歴無し」の車両と,修理後(つまり,「修理歴あり」)の車両の評価額を比較する方法です。
この場合,条件が同じ車が見つかるかが問題となりますが,近年ネットで中古車市場の価額を簡単に調べることができるようになり,この方法が使われることが多くなった印象を受けます。
3 評価損の金額の算定の仕方
評価損が生じていることが証明された場合,その金額はどのように算定されるのでしょうか。
「事故減価証明書」を発行してもらったり,同型,同走行距離の車両を比較しても,その金額には多分に評価的な側面が含まれます。真実,事故によって評価がいくら下がったかは,誰にもわからないといえます。
よって,「事故減価証明書」や,同型,同走行距離の車両を比較した価額は,参考にされますが,直接的にその数字が使われるわけではありません。
裁判例を検討すると,「修理額の〇〇%」が評価損として認められていることが多いといえます。